2026年、WRC世界ラリー選手権(WRC)の最終章を飾る「フォーラムエイト・ラリージャパン2026」は、3日間の競技のなかで最長となるデイ2の戦いを迎えました。初夏の愛知県と岐阜県を舞台に、美しくも過酷な全 8ステージ、120.22kmの限界バトルが展開されました。
この日の気温は摂氏30度を超え、照りつける太陽が路面温度を急上昇させる過酷なコンディションとなりました。タイヤの摩耗とマシンの冷却、そしてドライバーの体力を激しく削り取る極限の状況下で、ラリーは誰も予想し得ないドラマチックな展開を見せることになります。
午前中のステージは、首位を走るエルフィン・エバンス選手と、それを15.7秒差で猛追するオリバー・ソルベルグ選手の一騎打ちとなりました。スウェーデン出身のソルベルグ選手は鬼気迫るプッシュを見せ、一時はエバンス選手との差を10.6秒にまで縮めてプレッシャーをかけ続けます。しかし、ドラマは午後のオープニングステージ、SS10「マウント・カサギ2」で待ち受けていました。前のマシンがインカットしたことで外側に掻き出された泥が、アスファルトのコーナーを牙を剥く滑りやすい罠へと変えていたのです。ここへ進入したソルベルグ選手の「TOYOTA GR Yaris Rally1」はラインをワイドに外してスライドし、アウト側の電柱に右リヤサスペンションを激しく叩きつけました。優勝戦線からの無念のデイリタイア。チームのホームレースで上位独占を狙うトヨタ陣営、そして集まった日本のファンに大きな衝撃が走った瞬間でした。
ライバルの脱落という緊迫した状況のなかで、輝いたのはエバンス選手の冷静沈着なコントロールでした。ソルベルグ選手のマシンがストップしている横を通過する際にタイムロスを喫しながらも、 Welshman(ウェールズ人)の血を引くエバンス選手は集中力を切らしませんでした。続くSS12では見事なベストタイムを叩き出し、一時は20秒までリードを拡大。最終のスーパーSSでわずかに詰め寄られたものの、17.8秒のセーフティリードを維持して最終日へと駒を進めました。
ソルベルグ選手の不運により2位へ浮上したのはセバスチャン・オジエ選手。さらに、午後のループで覚醒したサミ・パヤリ選手がステージ3勝を挙げる快進撃で3位へと躍進。初日の出遅れから完全なリセットを果たした日本のエース、勝田貴元選手が粘り強い走りで4位までポジションを挽回しました。これにより、デイ1に続き「TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team」の「TOYOTA GR Yaris Rally1」が全ステージを制覇し、1位から4位までを独占するという、チームの母国ファンにとってはこれ以上ない完璧な布陣で土曜日を締めくくりました。
一方、最大のライバルである「Hyundai Shell Mobis World Rally Team」の陣営は、マシンのバランスや断続的なハンドブレーキの不具合に苦しみ、上位陣のペースについていくことができませんでした。アドリアン・フルモー選手が5位、ティエリー・ヌービル選手が6位、ヘイデン・パッドン選手が7位と、表彰台争いからは大きく引き離される苦しい1日となっています。
1位:エルフィン・エバンス選手(TOYOTA GR Yaris Rally1)
ニュース: ライバルの猛追やマシンのクラッシュ現場を通過するなどの困難を乗り越え、冷静に首位をキープ。最終ステージで一瞬ヒヤリとする場面もありましたが、無傷で生還しました。 「全体的に良い一日でした。すべての面で完全に満足できたわけではありませんが、状況が大きく異なり浮き沈みがあるのはこのラリーならではです。チームメイトの調子が非常に良かったので気を引き締める必要がありました。明日もまだ長い距離が残っており、トリッキーな区間もあるので最後までベストを尽くします。決してすべてをコントロール下に置いているわけではありません」
2位:セバスチャン・オジエ選手(TOYOTA GR Yaris Rally1)
ニュース: ソルベルグ選手の脱落により2位に浮上。エバンス選手とコンマ秒単位の接戦を演じましたが、初日のトンネルステージで失ったタイムを大きく挽回するには至りませんでした。
コメント: 「クルマのフィーリングが良くなりペースもまずまずでしたが、スピードに関しては依然として私が望んでいたほどではなく、優勝争いができるペースではありませんでした。昨日失ったタイムを挽回することはできませんでしたが、明日も重要な一日なので、チームと一緒にさらなる改善と細かな部分を良くするためのアイデアを試します」
3位:サミ・パヤリ選手(TOYOTA GR Yaris Rally1)
ニュース: 午後のセッションで本領を発揮。エナでのベストタイムや新設のフジオカSSSでの連勝を含む3つのステージでベストタイムを記録し、後続に26.9秒のリードを築きました。
コメント: 「午前のループではまだ100%満足できていなかったのですが、午後に向けて計画していた改善を実現することができました。3本のステージウィンを取れたこと、それ以上に手応えと自信が感じられ、ペースも最高だったことに満足しています。今日の午後の調子を維持して走り続けたいです」
4位:勝田 貴元選手(TOYOTA GR Yaris Rally1)
ニュース: 初日のフラストレーションを跳ね除け、午前中にヌービル選手を捉えて4位へ浮上。危ない場面やトラブルもなく、普段通りのスムーズな走りで日本のファンを沸かせました。
コメント: 「昨日から完全にリセットして、総合4位まで順位を挽回できたのは良かったです。トラブルなくスムーズな走りができました。明日はさらに多くのポイントを獲得するための重要なチャンスです。日本の大勢のファンの皆さんの前で良い走りをお見せしたいです。まだもう少しペースを上げる余地があります」
5位:アドリアン・フルモー選手(Hyundai i20 N Rally1)
ニュース: トヨタ勢の速さに圧倒されながらも、大きなミスを犯すことなく着実に走行を続け、厳しい路面コンディションを攻略。ヒュンダイ勢の最上位となる5位でデイ2をまとめました。
コメント: 「非常にタフな一日で、上位のトヨタ勢のスピードについていくことは困難でした。しかし、マシンをコントロール下に置き続け、この過酷な暑さとドライ路面において、今できるベストの走りとリスクマネジメントを徹底しました。明日の最終日に向けてしっかりとこの位置をキープします」
6位:ティエリー・ヌービル選手(Hyundai i20 N Rally1)
ニュース: マシンのハンドリングバランス不良や、一日を通して断続的に発生するハンドブレーキのトラブルに悩まされ、思うようにペースを上げられず6位へと一歩後退しました。
コメント: 「難しい一日でしたが、ハードにプッシュして楽しむことはできました。しかし、最後までマシンをうまく機能させるセッティングを見つけることができませんでした。フィーリング、フィードバック、そしてバランスに終始苦戦を強いられました」
7位:ヘイデン・パッドン選手(Hyundai i20 N Rally1)
ニュース: 3台目のヒュンダイをドライブし、路面コンディションが目まぐるしく変化するなかで安定性を重視。大きなトラブルを避けながら手堅く総合7位のポジションを守り抜きました。
コメント: 「非常にトリッキーな路面コンディションと、予想以上の気温上昇にタイヤマネジメントが要求される一日でした。マシンのセットアップに100%の自信を持てる状態ではありませんでしたが、確実に完走しチームにデータを持ち帰ることを優先しました」
8位:ジョン・アームストロング選手(Ford Puma Rally1)
ニュース: 「M-Sport Ford World Rally Team」を牽引。タフなアスファルトステージを走行していくなかで、ステージを追うごとにマシンへの慣れと自信を深め、総合8位につけています。
コメント: 「走れば走るほど、このマシンへの適応が進んでいるのを感じます。ステージが進むにつれてドライビングに対する自信がどんどん向上しているのが分かり、とてもポジティブな感覚で土曜日を終えることができました」
9位:ニコライ・グリヤジン選手(Citroën C3 Rally2)
ニュース: 総合9位につけ、サポート選手権であるWRC2カテゴリーのトップを快走。2位のカチョン選手と一日中僅差のドッグファイトを繰り広げ、5.7秒差で首位を死守しました。
コメント: 「1日中ずっと激しいプッシュが必要な、本当にタイトな戦いでした。ミスが許されないマージンの中でトップを維持できたのは素晴らしいことです。明日はさらに激しい戦いになりますが、集中力を切らさずに挑みます」
10位:アレハンドロ・カチョン選手(Toyota GR Yaris Rally2)
ニュース: 前日WRC2クラス1位(総合10位)からスタートし、グリヤジン選手と激しい首位攻防戦を展開。トップからわずか5.7秒差のクラス2位、総合10位を死守して最終日へ繋ぎました。
コメント: 「素晴らしい戦いができています。グリヤジン選手との差はわずか5.7秒なので、まだ何も終わっていません。明日の最終ステージの最後の1メートルまで全力でプッシュし、WRC2の勝利を目指して戦います」
ラリー最終日となる5月31日(日)のデイ3は、愛知県でヌカタ(額田)、レイク・ミカワコ(三河湖)という2本のステージを、シェイクダウンの逆送となるSS17/18「クラガイケSSS」および豊田スタジアムでのミッドデイサービスを挟んで各2回走行。そのうち最終ステージのSS20「レイク・ミカワコ2」は、トップ5タイムを記録した選手とマニュファクチャラーにボーナスの選手権ポイントが付与される「パワーステージ」に指定されています。6本のステージの合計距離は74.06kmと3日間で最短。リエゾン(移動区間)も含めた一日の総走行距離は226.29kmとなります。
FORUM8 Rally Japan 2026 – Classification after Day 2
| Pos | Driver / Co-Driver | Team / Car | Time / Gap |
|---|---|---|---|
| 1 | E. EVANS S. MARTIN | TOYOTA GAZOO Racing WRT Toyota GR Yaris Rally1 | 2:32:05.6 – |
| 2 | S. OGIER V. LANDAIS | TOYOTA GAZOO Racing WRT Toyota GR Yaris Rally1 | +17.8 +17.8 |
| 3 | S. PAJARI M. SALMINEN | TOYOTA GAZOO Racing WRT 2 Toyota GR Yaris Rally1 | +44.4 +26.6 |
| 4 | T. KATSUTA A. JOHNSTON | TOYOTA GAZOO Racing WRT Toyota GR Yaris Rally1 | +1:11.3 +26.9 |
| 5 | A. FOURMAUX A. CORIA | Hyundai Shell Mobis WRT Hyundai i20 N Rally1 | +2:05.2 +53.9 |
| 6 | T. NEUVILLE M. WYDAEGHE | Hyundai Shell Mobis WRT Hyundai i20 N Rally1 | +2:17.0 +11.8 |
| 7 | H. PADDON J. KENNARD | Hyundai Shell Mobis WRT Hyundai i20 N Rally1 | +3:41.8 +1:24.8 |
| 8 | J. ARMSTRONG S. BYRNE | M-Sport Ford World Rally Team Ford Puma Rally1 | +4:33.7 +51.9 |
| 9 | N. GRYAZIN K. ALEKSANDROV | Nikolay Gryazin Lancia Ypsilon HF (WRC2) | +7:17.7 +2:44.0 |
| 10 | A. CACHÓN B. LOZADA | Alejandro Cachón Toyota GR Yaris Rally2 (WRC2) | +7:23.4 +5.7 |