フォードは次世代ヨーロッパ向け車両に「ラリーのDNA」を注入

2026年10月1日、フォードはFIA世界ラリー選手権(WRC)へ、2028年からフルファクトリーチームとして復帰することを正式発表しました。フォード・レーシングの名義で参戦し、長年のパートナーであるM-Sportと再びタッグを組みます。新型WRCマシンは2029年にデビュー予定です。

Ford Racing WRC 2028 graphic with classic and modern Ford rally cars on a dirt track and champion driver portraits.

この復帰は、単なるモータースポーツへの再参戦ではありません。ヨーロッパ市場向けに展開する次世代の「ラリー育ち(rally-bred)」の乗用車群に、本物のラリーで培った性能とキャラクターを直接反映させるための戦略的な一手です。

「完璧に不完全なヨーロッパの道」で磨かれるクルマ

フォード・ヨーロッパ社長のジム・バウムビック氏は、次のように語っています。

「ラリーは、フォードのキャラクターが最も厳しい試練を受ける場所であり、何世代にもわたるファンが『不可能に挑むクルマ』のスリルを共有する場です。次世代のヨーロッパ向け車両にも、同じように素直で自信に満ち、運転する楽しさを感じられる精神を宿したいと考えています。」

ヨーロッパの道路は「完璧に不完全」です。スムーズなターマックから崩れた舗装、狭い石畳、高速のアウトバーンまで、路面は常に変化します。雨や暗がり、混雑によっても印象が大きく変わる。こうした道で本当に楽しいクルマを作るには、サーキットではなく、変化し続けるラリーステージで鍛え上げることが最適だとフォードは判断しました。

「ヨーロッパの道ではごまかせません。レスポンスとハンドリングが何より重要です。WRCはコントロールとドライバーの関与を究極に試す場であり、そこで得た精神と教訓を、次世代の乗用車にそのまま注入します。」(バウムビック氏)

50年のラリー遺産を次の世代へ

フォードは創業以来、レースを通じてより良い市販車を生み出す伝統を築いてきました。エスコート、シエラ、フォーカス、フィエスタ、プーマといったラリー仕様車が、50年以上にわたるWRCの歴史で重要な役割を果たし、複数のメーカーズタイトルとドライバーズタイトルを獲得。カルロス・サインツ、コリン・マクレー、セバスチャン・オジェ、ハンヌ・ミッコラ、マーカス・グロンホルムなど、伝説的なドライバーたちのキャリアも支えてきました。

この経験は、1970年のエスコート・メキシコから最新のレンジャー・ラプターまで、数々のアイコンモデルのインスピレーション源にもなっています。

フォード・レーシングのグローバルディレクター、マーク・ラッシュブルック氏はこう述べています。

「フォード・レーシング125周年を迎える中で、WRCにおける50年の遺産は、そこから生まれた楽しくてエキサイティングなクルマとの直接的なつながりがあるからこそ、最も誇りに思えるものの一つです。2028年以降、再びラリーレースに挑むのが待ちきれません。」

具体的な進め方

•  フォード・レーシングとM-Sportは即時に開発を開始

•  2028年からフォード・レーシングが直接関与する形でWRCに参戦

•  2029年に、次世代ヨーロッパ向け乗用車の一つをベースにした完全新型WRCマシンがデビュー

FIA会長のモハメド・ベン・スレイエム氏も歓迎のコメントを寄せています。

「新しいプロモーターが決まり、新技術レギュレーションに3メーカーがすでにコミットし、そこにフォードがフルワークスメーカーとして復帰を表明したことで、選手権の次の時代に本物の勢いが生まれています。フォードはモータースポーツの偉大な名前の一つであり、FIA世界選手権へのコミットメントを着実に広げています。今年F1に復帰し、世界ラリーレイド選手権の最高峰で戦い、2027年には世界耐久選手権のトップカテゴリーにも戻り、2028年からはWRCでもワークスとして戦う。4つのFIA世界選手権に存在感を示すことになり、ブランド・製品・技術のグローバルなプラットフォームとしてのモータースポーツの重要性を示しています。」

「退屈なクルマは作らない」という宣言

バウムビック氏は、顧客体験についても触れています。

「『ラリー育ち』とは、バッジやボディキットのことではありません。レスポンスが良く、落ち着きがあり、路面が変わっても楽しく感じられるキャラクターです。それが次世代ヨーロッパ向け乗用車の設計の核になります。

一部の人は背景に溶け込む家電のようなクルマを求めますが、フォードは違います。退屈なクルマを作るのはもう終わりです。車輪のついたトースターは作りません。道の変化を楽しみ、コーナーが開ける瞬間を味わい、クルマの魂に応えたい人のための車両を作ります。」

さらに、将来的には顧客が実際にラリー育ちの性能を体感できる没入型の体験プログラムも提供する方針です。

「最良の旅は、必ずしも一番簡単な道を行くものではありません。『行ってよかった』と思える道こそが、最高の旅です。」(バウムビック氏)

フォードが再びWRCのステージに立つことで、ヨーロッパの日常の道を走る次世代のクルマたちに、本物のラリーのスリルと自信が宿ることになります。ブルーオーバルが描く「ラリー育ち」の未来に、大きな期待が集まります。

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